質問主意書

被害が発生していない段階で、治安出動が下命される場合に関する質問主意書 平成13年10月

被害が発生していない段階で、治安出動が下命される場合に関する質問主意書

自衛隊法では第七十八条(命令による治安出動)、第八十一条(要請による治安出動)で、治安出動について規定しており、その下命要件も定められている。

一 治安出動で規定している「緊急事態」や「事態やむを得ないと認める場合」には、その事態が起こる強い恐れも含まれるのか否か。

二 被害が発生していない段階で、治安出動が下命される場合は、あるのか。あるとすれば、どのような場合か。

三 さらに具体的な事例において、治安出動の考え方を質問する。

例えば、米国で発生したテロのように、旅客機が、ビルへの自爆テロを今、まさにしようとしている場合(テロが起こる直前)、治安出動が下命可能なのか。

また、このケースではどのような状況では治安出動が可能で、どのような状況では治安出動が不可能なのか、お教え願いたい。

右質問する。

 

衆議院議員長妻昭君提出被害が発生していない段階で、治安出動が下命される場合に関する質問に対する答弁書

一及び二について

自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第七十八条第一項の規定による治安出動命令の要件である「間接侵略その他の緊急事態に際して」とは、間接侵略その他の緊急事態が現実に発生している場合をいい、そのおそれがあるにすぎない場合は含まれないと解している。また、この緊急事態が現実に発生している場合とは、人の生命、身体又は財産における被害が現実に発生している場合に限られないと解している。

一方、同法第八十一条の規定による治安出動命令についてのお尋ねの趣旨が明らかではないが、同条第一項の規定による治安出動の要請の要件である「治安維持上重大な事態につき」とは、治安維持上重大な事態が現実に発生している場合をいい、そのおそれがあるにすぎない場合は含まれないと解している。また、この治安維持上重大な事態が現実に発生している場合とは、人の生命、身体又は財産における被害が現実に発生している場合に限られないと解している。

被害が現実に発生していない段階でどのような場合に治安出動が命ぜられるかについては、その状況に応じ個別具体的に判断されるものであるため、答弁することは困難である。

三について

お尋ねの事例において自衛隊法第七十八条第一項又は第八十一条第二項の規定による治安出動が命ぜられるか否かについては、仮定の事例において限られた与件のみに基づいて判断することはできないため、答弁することは困難である。また、お尋ねの事例においてどのような場合に治安出動が命ぜられるかについては、その状況に応じ個別具体的に判断されるものであるため、答弁することは困難である。