国会質疑

2013年11月01日

2013年11月1日(金) 衆議院本会議で代表質問

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※上記リンクから、説明・質疑者等の欄の「長妻昭(民主党・無所属クラブ)」を選択すると動画で内容を確認することができます。

以下 日記本文↓

 本日、衆議院本会議が開催されました。ながつま昭は、「社会保障制度改革プログラム法案」について代表質問をしました。代表質問の内容は下記の通りです。

○衆議院本会議代表質問内容

 民主党の長妻昭です。私は、民主党・無所属クラブを代表し、ただいま議題となりました、いわゆる「社会保障制度改革プログラム法案」について質問をいたします。

 この法案は、当初の趣旨とは全くかけはなれてしまいました。
そもそも、このプログラム法案は、社会保障制度・改革推進法という、特に年金と高齢者医療の制度改革を推進することを大きな目的とした法律に基づいています。

 推進法には、法制上の措置を1年以内にするとの規定がありますが、それは年金制度や高齢者医療制度の改革を法律として、まとめるように定めたものであります。

 ところが、このプログラム法案には、年金制度改革も高齢者医療制度改革も入っていません。医療、介護に関する個別法案の方針と提出スケジュールなどが規定されているばかりです。

 推進法に基づいて設置された、社会保障国民会議の場でも、年金制度そのものの改革が話し合われる場面は全体のほんの一部しかありませんでした。

 私たちは、年金一元化・最低保障年金という抜本改革案をそのまま飲まなければだめだ、と言っているのではありません。
昨年、自民党は推進法原案にあった、「現行制度を基本として」という条文の削除を、民主党と合意して、年金制度改革に踏み込みました。

 我々の案がダメだというのであれば、政府・自民党の制度改革案を示してほしいと言っているのです。
お伺いしますが、本当に今の年金制度や高齢者医療制度を変えなくても、将来も役割を果たせるとお考えですか。お答えください。
 
 例えば、年金制度です。

 日本では、会社で働いているのに、厚生年金に入ることの出来ない人が非常に多すぎます。

 現行の年金制度は、先進国では考えられないほど、漏れの多い制度です。

 厚労省の調査では、会社で働いているものの、ルール上加入できないなどの理由で、厚生年金に入れずに、国民年金に加入せざるを得ない人が、主婦を除く、国民年金1号被保険者だけで600万人近くいることが示されました。
この中の学生アルバイトを除くと何人になるのかお示しください。

 また、法律上、厚生年金に加入させなければならないにもかかわらず、加入できない人が推計350万人もいることが先の予算委員会で初めて、示されました。非常に大きな人数です。これらの対策をお示し願いたい。

 厚労省は、「実際に、全体で、どれだけの人が会社で働いているのに厚生年金に入っていないのか、人数も、理由もわからない」と繰り返していますが、理由の如何を問わず、会社で働いているのに厚生年金に加入していない人をサンプル調査して、その原因と属性の全体像を把握すべきと考えますが、いかがですか。
 
 現在、国民年金は自営業の割合が家族従事者も含め、2割まで落ち込んでいます。国民年金の未納は、自営業者よりも会社で働いているのに厚生年金に加入できない国民年金被保険者に多く見られます。

 低所得の資産もない非正規雇用者等が、自営業のための国民年金に加入せざるを得なくなり、国民年金が、いわば不安定雇用年金となってしまいました。現在でも国民年金受給者の34%もの人が月額4万円未満の受給額です。
 このまま放置すると、将来、低年金・無年金者が急増して、生活保護にどっと流れ込むことになりかねません。今でも生活保護受給者半分が60歳以上でその割合は拡大しています。

 民主党の年金改革案がダメというのであれば、政府・与党は、これらの問題をどう解決するのか、是非、制度の改革案を提出願いたい。いかがですか。
 適用拡大を数年かけて、数十万人ずつ進めるというような焼け石に水の、微修正案では、解決できません。

 また、基礎年金の半分には、毎年10兆円もの税金の補助が入っていますが、高額所得者には、この部分について、圧縮をお願いする必要があると考えます。
民主党は昨年、高額収入者には徐々に基礎年金の税金部分を削減する法案を提出しましたが、自民党の反対で成立には至りませんでした。
 政府・与党は、このような考え方も否定するのですか。

 現在の年金制度の受給者を受給額の多い順に10分類した場合、最大と最小の受給額格差は7倍もあります。
保険料は支払った分に比例して給付にまわす、税金は格差是正に使う、このような保険料と税との役割分担が必要と考えますが、いかがですか。
 
 世界の年金改革の流れは、3つのポイントがあります。
一つは、職業によって変わらない制度、二つ目は最低保障機能がある制度、三つ目は、低賃金の人も保険料を払い易い制度と持続可能性です。 これに少しでも近づく改革案を提示願いたい。いかがですか。

 昨年の三党合意の時とは、がらりと異なり、消費増税に関連して、公共事業の大幅な増額や法人税の復興増税打ち切りの議論など大盤振る舞いが目立ちます。
民主党政権で設定した年間の国の借金の上限枠も撤廃されてしまいました。

 そもそも消費税を10%に上げるという厳しいお願いをした理由は、社会保障の充実と、借金の返済を進めて孫子にツケをこれ以上、増やさないためでした。

 公共事業に使うためではありません。

 本当に社会保障は約束通り、充実できるのでしょうか。いくらを充実に回すのですか。
また、二年後の基礎的収支の赤字半減、2020年の基礎的収支黒字化という、借金返済の目標は約束通り達成できるのでしょうか。大きな不信感を持っています。いかがですか。達成する道筋をお示し下さい。

 このプラグラム法は、消費税10%を前提とし、一部を社会保障の充実に充てるとしています。しかし、充実の目玉である、社会保障の自己負担全体を合算して一定額で頭打ちにする総合合算制度が、このプログラム法からすっぽり抜け落ちています。いつから実施するのですか。

 仮に消費税10%が先送りされた場合、社会保障の削減と充実がセットのはずが、削減だけ先行し、充実が先送りされるということが起こりうるのでしょうか。

 二つの保障、安全保障と社会保障は国家の礎です。安倍内閣は安全保障に比べ、社会保障を軽視しているようですが、社会保障や人への投資である格差是正策は、決して経済成長のお荷物でなく、むしろ結果として経済成長の基盤を作るものです。

 確かに社会保障は国の税金だけで年間1兆円ずつ増加しており、野放図に伸ばすわけにはいきません。しかし、社会保障を乱暴に切ると、かえってつけが国の財政に回ってきます。

 一例をあげます。介護の要支援の方々を介護保険の枠外にし、受け皿の無いままに地方移管するなど乱暴な削減が、プログラム法から垣間見えます。しかし、民主党の強い要請で、政府が初めて明らかにしたように、介護保険全体で8割もの方が一次判定で軽いものも含めて、認知症となっています。
 
 要支援といわれる分類の方も半分が認知症でした。介護保険サービスを受けている人のうち、要支援者は2割90万人もいらっしゃいます。
 乱暴に、介護を切ると、予防効果が薄れ、かえって重い介護度に進んでしまいかねません。

 介護するために職を辞めざるを得ない介護離職は現在、年間10万人もおり、年々増加の傾向にあります。団塊の世代全員が75歳以上になる2025年に向かって介護離職が急増しかねません。

 例えば、大手商社、丸紅の社内アンケートによると2011年時点で40代、50代で介護をしている社員が11%、しかし、2016年には84%が介護をする可能性があると回答しています。

 現在、働きながら介護をしている人は291万人で、介護をしている人557万人の半分以上が職を持っています。

 介護を乱暴に切って、第一線で働く人の介護離職が増えれば、短期的に介護財政は助かっても、安倍総理のおっしゃる成長戦略には大きなマイナスです。いかがお考えですか。

 負担増をお願いする際にも丁寧な議論と手法が必要です。
 余裕のある人が、そうでない人を支える、この考え方は、現役だけで高齢者を支えきれない今、必要です。

 しかし、本当に余裕のある人は誰なのか。この深い議論が政府に欠けています。単純に収入や資産だけで判断するのでなく、その人が持ち家か、賃貸か、扶養者はいるのかどうか、本人の健康状態など、いくつかの条件を勘案する必要があるのではないでしょうか。いかがお考えですか。
 
 また、国民負担率を乱暴に抑えると、かえって国民全体の負担は上がってしまう、という事実にも目配りするべきです。
 
 国民負担率は、税と保険料の国民所得に対する割合であり、これを乱暴に抑えれば、かえって窓口負担や自己負担、家族の負担等の全体の国民負担が増加して、格差が拡大しかねません。どうお考えですか。お答えください。

 そもそも日本のような国民負担率という概念は海外では一般的ではありません。社会保障給付費に自己負担が入っていないというのも、国民に誤解を与えます。
 
 政府は、社会保障削減方針に関しては、どの指標を目標としているのですか。かつては、財政赤字を含む潜在的国民負担率を50%を超えないとしていましたが、今後、給付費のGDP比を抑えようとしているのか、国民負担率を抑えようとしているのか、どのような指標に基づく基本方針を持っているのですか。お尋ねします。

 本来は、自己負担や家族の負担、介護離職、育児のための離職であるM字カーブ問題なども含めた金に換算できない国民全体の負担率を考えるべきではないでしょうか。いかがですか。

 日本が弱い分野で、最も力をいれなければならないのが、医療介護の予防です。
予防を徹底させれば、社会保障全体の供給量が抑制され、国民の本当の負担も抑えられます。特に、田村厚労大臣が立案した医療介護の予防による2025年5兆円削減プランの内容と意気込みをお聞かせください。
 
 最後に、今、深刻なのは、格差の拡大だと考えます。
 世界の格差・貧困問題が、テロの温床を広げ、日本の格差・貧困問題が、社会を不安定化して、経済成長の基盤も損ないつつある、と考えます。
 格差を示すジニ係数も悪化し、相対的貧困率は先進国で米国に次いで2番目に高くなりました。

 特に子供の格差が深刻です。現在、生活保護を受ける子ども4人に一人が大人になっても生活保護から抜けられません。新しい貧困層とでもいう階層が出来つつあります。

 親の年収による学歴格差についても、年収400万円以下では大学進学3割、年収1000万年以上であれば大学進学6割です。非正規雇用者も2000万人となり、正社員との結婚格差も2.5倍まで広がりました。
 
 我々は、格差が小さく、すべての人に居場所と出番のある社会、共に生きる社会を目指していますが、今の政府は、どのような社会を目指しているのか、明確ではありません。特に、日本の格差の深刻さについては、どのような認識をお持ちですか。
 
 地縁、血縁、社縁が薄れ、孤立化が進む今、地域になじみのある中学校の学区ごとに、医療、介護、保育、教育、町会、ボランティアなどが連携して、見守りのネットワーク、つまり、新しい地縁を、下から目線で、作る必要があると考えます。現在の地域包括ケアを拡充する概念です。いかがお考えですか。
 
 デフレ脱却は最重要課題であることは間違いありませんが、安倍内閣は、バブルを生み出す超金融緩和、短期的利益志向、雇用の規制緩和などアメリカ型資本主義をまっしぐらに、なぞっているように見えます。

 意図したか、意図せざるかは別にして、内閣支持率が株価と連動した内閣となり、株価維持を重視する、安倍総理は、証券会社の部長のようなマインドになっているのではないでしょうか。

 日本が目指す、日本型資本主義は、バブルや格差を拡大させるアメリカ型というよりも、GDPに現れない価値を重視し、長期的利益や安定雇用を目指すヨーロッパ型資本主義を参考にするべきではないでしょうか。

 バブルを起こさない成長を志向し、所得再分配や安心提供による消費拡大を狙うボトムアップ型の経済再生を目指すべきです。日本は死ぬときに一番貯金を持っている国で、老後の不安が消費を抑制しています。また、所得再分配政策が消費を喚起するのは、低所得者ほど所得を消費に回す、限界消費性向が高いからです。

 政府・与党は、安倍総理が目指す「世界一企業が活躍しやすい国」の先にある、高齢者人口が最大になる30年後を見据えた、社会像をお示し願いたい。30年後に向けて、政府は、どんな社会を目指すのですか、お答えください。

 それぞれの政党が、あるべき社会像を提言・議論し、競い合うことが国益に、かなうことだと考えます。

 我々、民主党は、その議論をリードして、目指すべき社会像、少子高齢社会に対応する日本モデルを確立するべく取り組んで参ります。ありがとうございました。