2016年01月14日
2016年1月14日(木)代表代行記者会見の模様です
■冒頭発言
○予算委員会で「厚生年金違法未加入問題」「格差問題」「軽減税率財源問題」などについて質疑(配布資料添付)
【代表代行】
昨日、私も衆議院予算委員会で質問しましたが、200万人の厚生年金違法未加入の問題です。日本は法治国家にもかかわらず、この200万人の方が不当に、厚生年金に入れるのに入れず、健保に入れるのに国保になり、保険料の負担も過重で、老後の年金も少ない。こういう状況に追いやられている方がこれほどいらっしゃることが明確になった以上、政府にはきちっとした対応をとってほしい、緊急対策をとってほしいと総理に申し上げました。
議事録を精査しましたところ、79万事業所をやりますというようなこともおっしゃいましたが、しかし、これはよく調べてみると従来からの方針であり、何か新たな対応を講じると言ったということではない部分が相当多いので、これは改めて質問主意書や、あるいはまた予算委員会等々の質疑の中で、先進国としては非常に恥ずかしい、他の国ではあり得ないこの問題をさらに取り組みを進めていきたいと思います。
資料もお配りしましたが、基本的には株式会社等の法人にいらっしゃる、あるいは従業員が常時5人以上いらっしゃる個人経営の事業所、ここにいらっしゃる方で、勤務時間及び勤務日数が一般社員の4分の3以上働いている、基本的には週30時間以上働いていれば、正社員だろうが非正規雇用だろうが厚生年金及び健康保険に入ることができる。こういう方々はぜひお近くの年金事務所に相談をしていただきたい。年金事務所が厚生年金の適用をするわけですから。
そして、共生社会創造本部にも関わるのですが、昨日の総理の答弁で印象的だったのは、格差というのが基本的にはおおむね横ばいだということを結論的に答弁されましたが、我々の感覚からしても世論調査の感覚からしても、そうでない。そこに経済成長が阻まれている大きな原因である「格差の壁」がある。この認識が非常に不十分であるということがわかりましたので、これも参議院選挙の大きな争点になり得るのではないのかと思います。
そして軽減税率1兆円の財源につきましても、いろいろな憶測・不安が流れておりまして、年金に使う恒久措置である6000億円をそちらに使うのではないか、参議院選挙の後に突如としてそういうことが言われてくるのではないのかという憶測や不安が広がっておりますので昨日総理に聞きましたが、何を財源に充てるかは相変わらずおっしゃらない。「上振れ」ということと「底上げ」ということを使い分けて、非常に玉虫色の答弁が続いておりますので、参議院に場所は移りますけれども、この問題についてもまた相当追及していきたいと思います。
■質疑
○平成27年度補正予算案の審議について
【記者】
今日、補正予算案が衆院を通過した。冒頭で少しおっしゃったが、長妻代行が今後、参院で期待することと、改めてこの衆院の論戦を通じて十分に追及し切れなかった点があれば伺いたい。
【代表代行】
私は、いろいろな役所からヒアリングや、いろいろな方と議論する中で、1兆円の軽減税率の財源はある程度めどがついているのではないかと推察している。それについて、やはり政府にちゃんと参院選挙の前に、これは国民の審判の機会ですので、きちっと言っていただく。「こんなはずではなかった」と、選挙が終わったら予想外の財源だったということでは、我々野党としても役割を果たせませんので、参議院の審議においても、その財源をより明確にさせていくことが重要だと思います。
そして格差についても、「基本的に横ばいだ」という認識も改めてもらうような、個々の事例を突きつけて、考えを変えていただく。あるいは世間の感覚からずれている「パート(月収)25万円」という答弁や、あるいは女性が働きに出てうれしい悲鳴だ、待機児童が増えたと。しかし、その働きに出た女性をつぶさに見ますと、高齢者の方が多い。65歳以上の方も大変多い。そういう実態の評価と数字のところが違う説明をまき散らしている状態というのは、国の政策の方向性にとっても相当問題だと思いますので、その基本認識を質していく。
先ほど言い忘れましたが、今お配りしているのは(添付資料カラ―)、推計200万人の厚生年金違法未加入の年齢別の人数でありまして、40歳未満で123万人いらっしゃる、相当深刻です。こういうことについてもリーダーシップをもって解決に望んでいただきたいということも引き続き追及する必要があると思います。
○消費税・軽減税率の財源問題について
【記者】
軽減税率の財源はある程度めどがついているのではないかと推察しているという話だが、今のところ1兆円のうち6000億円分の財源が未定だと政府は説明しているが、どの辺の財源がめどとして政府が目をつけているのかという代行の推理があったら伺いたい。
【代表代行】
嫌な予感が当たりましたのは、総合合算制度4000億円が狙われているのではないかと思いましたら、やっぱりそうなった。
6000億円と言いますと、年金の福祉的給付措置、低年金の支援制度、これは恒久措置です。低年金、あるいは遺族年金、障害年金を受給されている方々、約700万人に対して、消費税10%増税時に年間最大で6万円を支給する恒久措置、これが年間6000億円で、私はそこら辺が心配です。ですから、政府はそういうことは絶対にないと明言していただきたい。
つまり政府は、(社会保障の)充実2.8兆円は同じですと言っている。これは頭の体操ですが、極端に言うと、例えば2.8兆円社会保障を削減して、別の費目で2.8兆円社会保障を付ければ、これは「充実が2.8兆円」ということになります。もちろん、そんなべらぼうな削減はできませんが。そういうような差し引きで充実が2.8兆円ということですから、よくよく中身を見ないと、「ああ、そうですか」ということだけで納得し切れない数字のトリック、そういうことも注意しないと見過ごしてしまう危険性があります。
いずれにしても、これは我々多くの仲間を失って、消費増税、選挙を戦い、それは社会保障充実のため、私も3党合意の交渉の責任者を務めました。どんどん総合合算制度から他のものまで手をつけるということが絶対にないように。ただ、不安があるのは、財源は結局はわからないと言っている。2.8兆円は維持するけれども、軽減税率の財源は社会保障でやるのか何でやるのかわからないと言っている。そこら辺は相当きちっと精査をしていかないといけないと思っています。
○年金積立金の株式投資について
【記者】
マーケットのことについて伺いたいが、世界的な株安傾向を受けて、今日の日経平均も一時下げ幅が700円まで行き、大きく変動している。円高も進んでいて、今は117円台前半となっている。年金の運用とか、その他もろもろ影響が出てくると思うが、この状況をどのようにご覧になっているか。
【代表代行】
総理の最近の答弁は非常に不可思議です。つまり年金の問題、積立金の運用で評価損というか含み損が出たが、それは短期的なもので一喜一憂するなと。ところが私の記憶をたどりますと、予算委員会で私が理事だった時、今回の安倍内閣、少し株が高くなって利益が出た時に、総理は「これだけ運用で利益が出ました!」と、力強く言っていた。これは議事録を見ていただければ。私がその時に申し上げたのは、いや、短期的なことで一喜一憂するのはおかしいのではないか、100年の運用スパンの中で中長期でリターンが取れるかどうかを見るんですよと申し上げた。
ですから、我々としても短期的に一定の幅で損が出て、それがけしからんということを一律に申し上げるつもりはありませんけれども、ただ我々の基本的ベースとしては――公的年金の基礎年金まで株で運用するというのは世界でほとんどない。アメリカの公的年金200兆円も全額元本保証ですよ、株では1円も運用していない。そういうところで半分も運用していることについて、別に短期的に損したからけしからんというよりも、中長期で本当に大丈夫ですかと。そういうことも含めて心配になっている。
(政府は)よくCalPERS(カリフォルニア州退職年金基金)とか例を出しますが、あれはカリフォルニア州職員の年金の運用でありまして、なぜかアメリカの公的年金はいつも表に出てこないのです。株で運用しているのだけつまんで都合のいい表を作っている部分も政府にありますので、ここら辺はよくよく見ていく必要がある。
あるいはインハウス運用(自家運用)も始まる。やはり恣意的に政府が銘柄を選んで議決権を行使していくということになると、いろいろ問題も発生するのではないか。インハウスとなりますと、自前で職員も相当抱えるわけで、じゃあそういう職員にはどういう専門性を持った職員を入れるのか、それは恣意的にならないのかどうか、いろいろな論点はあると思います。
いずれにしても50%の株投資というのは、これは世界の標準から見ても、公的年金の運用、基礎年金が含まれているということで言えば、問題が大きいということだと思います。
○次期国政選挙の争点について
【記者】
選挙について伺いたい。2015年末の定例会見で代表代行は、この3年、安倍政権によって日本が悪い方向に変容してしまった、次の選挙結果によってはさらに変容が進んでしまうかもしれない、と危惧されていた。最近の世論調査では、与党も野党も支持率は横ばいで、自民党支持の多くは「他に支持する政党がない」という理由がとても多い。今回の年金の違法未加入の問題も大変重要な指摘だと思うが、こうした地道な訴えが今後、有権者の投票行動を変えていくと思われるか。また、変えていくには何か他の打ち出し方が必要だとお考えか。
【代表代行】
当然、個々の問題点についての徹底追及と提言、これは繰り返していくということですが、全体で言うと、今おっしゃったように「日本の社会の方向性、これで大丈夫なのか?」ということだと思います。
その中で大きな争点の一つが憲法改正。安倍総理は「1億総活躍」で最後まで参院選の焦点で行くのかと思いきや、この前の会見で「憲法改正が非常に大きな争点」という趣旨のことをおっしゃいました。3分の2の勢力を獲得すると。
じゃあ自民党の憲法改正草案、これを見ますと、相当問題があるのではないか。例えば「公共の福祉」という言葉が一切ないですね。これは「公益及び公の秩序」という言葉に換わっていて、これは下手をすると法律でいろいろな権利が制限されかねない、そういうふうに私は感じますし、「最高法規」である憲法の、97条「基本的人権の本質」という条文そのものを丸ごと削除すると。これは信じられない中身も含まれて、これはここで言い尽くせないぐらいの問題があるものです。
ですから、そういう思想を持った自民党が憲法改正というカードを手にしていいのか、というのは大きな問題ですし、あとは安保法制や臨時国会を開かないなど憲法をないがしろにする動き。
あるいはマスコミに対する自民党の圧力。今、テレビからは政府批判をするキャスターが次々と消えていると私は感じます。
道徳教育も3年後、4年後から全国の小中学校で特別の教科となって、成績をつける、評価が始まるわけですね。愛国心も含まれます。それが各都道府県の教育委員会の判断次第では高校受験の内申書にも入ると、あまり国の批判をするのはよくないと、小中学生、あるいは親も家庭であまり国の批判をすると、子どもが学校で国の批判をして成績が下がってしまうのではないのか、こういう空気、懸念が生まれる。批判を忘れた国家というのは必ず間違いを犯すというのは歴史の教訓です。ですから、そういうことを、国民の皆様に我々の危惧を伝えていくことが大変重要だと思います。
ただ、難しいのは、そういうふうになった後ではもう手遅れなので、いかに危機感を持って伝えていくかということも大変重要だと思います。
【記者】
自民党は憲法改正に関して市民との勉強会を開いているが、どれだけ危険かということを具体的にどのように訴えていくつもりか。
【代表代行】
先ほども山井和則予算委員会筆頭理事と話しましたが、やはり予算委員会の場で、安倍総理は自民党総裁でもあるので、そこで自民党の憲法に対する考え方を一つ一つ確認していくことも必要なのではないかと。私もかつて予算委員会で確認しましたが、相当危うい。ただ、その時はあまり憲法が注目されていなかったので、それほど世間には伝わらなかったと思いますが、今後は参議院選挙の最大の争点になると、総理がそういう趣旨のお話をされておられるので注目度も高いと思います。それを論戦で明らかにしていく。それをもって各民主党議員も、そういう問題意識を持って発信していくことが必要ではないかと思います。
【記者】
自民党は、目指している緊急事態条項の創設について、有事や自然災害などに必要ではないかと訴えているが、この創設について代表代行の考えを伺いたい。
【代表代行】
これは一見、説得力があるように聞こえる議論ではあると思う。ただ、これはぜひ過去を調べていただければと思うが、いわゆる有事法制、国民保護法制、幾つかの本数の法案でしたが、これを議論した時、民主党と自民党と議論をして成立をしたが、その時も憲法を変えないで国民の皆さんの一定の権利を制限できるのかどうかと、憲法を変えないと難しいのではないかと、いろいろな議論がありました。しかし、法制局も含めて過去の議論の積み上げの範疇で、有事法制、有事立法ができたわけですね。ですから私は、この有事法制ができたことで緊急事態条項の必要性は限りなく無くなったのではないか。かなりのことが民主主義の原則の中で、憲法に抵触せずに、国民を守る法制というのができた。それをもって相当必要性が低くなっている。これはおそらく自民党議員も共有している方が多いのではないかと思います。
ですから、突然この緊急事態みたいな話が出てきたことにおいて、何かハードルの低い、「お試し改憲」という言葉もありましたが、ある程度納得性が高いような雰囲気に持っていくような議論だとすると、中身を一つ一つ、本当に改正しないと国民の安全を守れないのかどうかということを、緊急事態法制というと、政府が国会を通さないで法律を作れることに近い権力を与えることになるわけですから。これは厳密に必要性を議論しなければ、雰囲気に流されて議論するとよくない結果になると思います。
○民主党の立ち位置について
【記者】
大手新聞の社説などに「民主党は左に傾いた」という指摘が出だしているが、岡田執行部としては民主党は安保法制などを含めて左に傾いているという認識を持っているのか、それとも反論するのか。北海道5区で新党大地が自民党に行くような、そういう流れの中でそういうことになったのかなと私は思うが、左に傾いたという認識があるのかないのか伺いたい。
【代表代行】
私も自分自身を振り返ってみると、「まだ」と言うか「もう」と言うか、16年前に国会議員に雇っていただいたわけですが、その時は自分の意識では自分は真ん中の発想だなと思いたのですが、だんだんと世の中が右寄りになってきたのか、ちょっとリベラル寄りになってきている。
左寄りという話がありましたが、例えば安全保障についても、基本的には集団的自衛権は認めないということは歴代の総理大臣、同じ答弁をずっと繰り返してきて、それが一つの法的安定性に結びついた。その答弁をした人たちは左だったのかというと、当時は真ん中というかむしろ右寄りの、中曽根さんですら「集団的自衛権は行使できない」とおっしゃっていた。ですから世の中の空気が相当変容して、右・左という表現が妥当かどうかは別にして、同じ表現の立場に立つと、相当空気が右になってきているのではないか。
一つは、私がよく申し上げるのは、戦場で実際に戦った日本兵の皆さんが、今、最年少でも85歳ぐらいになっておられて、どんどん戦争を知らない方が増えていらっしゃる。そこと無縁ではないという気が相当いたします。10年前にこんな議論が出たら、安保法制は潰れていたのではないかと私は思いますが、今は、反対も多いのですが、スーッと、というか、我々も頑張らなければいけないのですが、通ってしまっている。昔の座標軸に比べると相当世の中が変容してきている。岡田代表もそういう思いだと思いますが、我々は真ん中で歩んできて、今も歩んでいるという思いですが、私は世の中が相当変容してしまったのかなという気はいたします。
○慰安婦問題に関する自民党議員の発言について
【記者】
自民党の部会で桜田議員が「慰安婦はビジネスだった。これを何か犠牲者のように宣伝する工作に惑わされ過ぎだ」という発言をされた。日韓合意もある中でこのような発言がなされていることについての考えを伺いたい。
【代表代行】
これは報道によると自民党の正式な会合での発言と聞いていますが、総理は昨年末に日韓合意を「最終的かつ不可逆的」とおっしゃった。ところが今回の発言は、そのご自身がおっしゃったことに足元からそうでないような発言、火種ということになるとすると、報道も大きくなっていますから、党総裁としてきちっとガバナンスをしていかないと、自らおっしゃった「最終的・不可逆的」というのが自らの足元から崩れかねない。これは自民党、民主党とかそういうことではなくて、やはり国益という意味ではたして妥当なのかどうかということについては、我々は野党ですけれども、心配をしております。
○維新の党との協力・結集について
【記者】
維新との合流について、岡田代表が3月末までに判断するという意向を示しているが、長妻代表代行としては、どういう形を目指していくべきなのか、今の時点でどうお考えか伺いたい。
【代表代行】
代表もおっしゃっているのは、形とかなんとかというのは全く白紙だと思う。
ただ、仮にダブル選挙、あるいはダブル選挙がなくても参議院選挙が7月にある。昨日にわかに、4月に解散して衆議院選挙するというような話しが複数のところから出てまいりましたが、永田町はそういう話がいろいろ流布されるので、何が正しいのかどうかというのはわかりません。いずれにしてもそういうことをするのであれば、参議院選挙は確定しているわけですから、逆算すると3月末が一つのタイムリミットになるのではないかというのは常識的な考え方だと思います。
あとは、統一会派を作ったばかりで、政策調整会議も始まっていますから、そういうところを見ながら、どういう形にするのかということはこれからの議論になると思います。全く白紙ということです。
衆議院の選挙制度改革について
【記者】
選挙制度改革の答申が14時半に出され、まだご覧になっていないかと思うが、指摘として、現行法のままで、夏にダブル選になって選挙に突入する場合、問題があるのではないか、また「違憲状態」という判決が出るのではないかという指摘がある。それについて代表代行の考えを伺いたい。
【代表代行】
これは後で枝野幹事長がぶら下がりをしますが、常識的にはそうだと思いますね。ただ、政府からは、いやいや、解散権を縛るものではない、ということが漏れ聞こえてきます。
常識的には、一票の格差が是正されないまま、区割りも全く変わらないで前回と同じような形でやるということは、問題が大きいのではないかと思います。