日々の活動(旧)

2015年02月10日

2015年2月10日(火) 民主党共生社会創造本部第2回総会を開会 大沢真理東大教授より格差・貧困と経済 成長についてご講演をいただく

本日、民主党は、党共生社会創造本部(本部長・岡田克也代表)第2回総会を国会内で開き、東京大学社会科学研究所の大沢真理教授から「格差・貧困と経済成長――OECDの近年の資料を参考に」をテーマにご講演いただき、意見交換をしました。
ながつま昭は、共生社会創造本部の本部長代行として、とりまとめの責任者となっています。
岡田代表はあいさつで、「大沢先生には民主党の男女共同参画政策を小宮山(洋子)さんたちと作ったときにも大変なご指導をいただいた。あれから10年以上経つ。今日は違う視点からお話いただく」などと述べ、講演に謝意を示しました。
ながつま昭は、社会保障のための投資について、その便益(リターン)の重要性を指摘し、格差是正をすることでGDPの拡大や財政再建に寄与する方策を考える必要性をお伝えしました。

大沢先生のご講演の内容は以下のとおりです。

大沢教授は講演の冒頭、「そもそもアベノミクスで経済成長したのか」について、GDPの四半期ごとの成長率を踏まえて、「安倍政権になって経済成長したという見方はスタートダッシュでそう見られてはいるが、どんどん失速している。2014年の1−3月期は消費税アップ前の駆け込み需要でプラスになったが、その次の4−6月期は反動で落ち込み、その後も回復していない」と指摘。「名目成長率よりも実質成長率の方が高い。名目を見ていくと民主党政権期の2010年7−9月期が近年では一番高かった時期で、東日本大震災の影響に引っ張られて経済が停滞した」と分析し、その後に上向いたタイミングがちょうど安倍政権が始まった時期と重なっただけで「安倍政権によって成長したものではない」と述べた。また「安倍政権になってつるべ落としで実質賃金は下がっている」として資料(下記ダウンロード参照)を示し「アベノミクスは経済成長もしていないし、賃金はとにかく下がっている」と断じました。

経済格差があることで経済成長がマイナス方向に引っ張られているとも説明し、「相対的貧困率が高いと1人当たりの実質GDP成長率も低いことがかなりの確度で言える」と語った。また、政府の所得再分配によって貧困がどれだけ減ったかを示す貧困削減率については、「日本の貧困率はバブルと言われた80年代半ばにも決して国際的に見て低くはない。その後に上昇して、近年では主要国ワーストの米国に非常に近い状態になっている」と述べた。所得再分配が貧困を削減する機能については非常に低いレベルから上がってはきたが50%程度で、70%レベルのEUと比較すると大きな差があることにも触れ、「日本の貧困削減率が上がってきたことは主として年金が成熟して高齢者の貧困率が下がっている」と述べた。さらに、1980年代の貧困は高齢者の問題だったが最近は高齢者の貧困率は低下し、子どもから中年層で上昇していることを説明。「一番問題なのは政府の所得再分配が機能しているかどうかだ」「OECD諸国のなかで日本は唯一貧困削減率がマイナスになっている」と大沢教授は指摘し、「政府が所得再分配をするがために、それがなければ貧困でなかった人まで貧困に陥るという事態」だとも語った。この点については給付にも問題があるが負担面にも問題があるとし、日本の片稼ぎ世帯は1人親世帯よりも負担が軽いのが実態で、これは配偶者控除によるものだと説明。また民主党政権の子ども手当の効果は大きく「大変な人ほど税の負担率が下がる」状況が明確に見て取れたことにも触れました。

こうした実態を踏まえて大沢教授は、再分配の取り組みは子どものいる世帯や若者層を重視することが重要だと指摘するとともに、子どもの教育の拡充や若者の技能開発・学習等を促進すべきだとした。教育を受ける機会が少ないために犯罪者の増加を招き、それに対応するためにかかる社会的費用と比べ、その10分の1程度の政府支出で貧困解消のための対応が可能なことにも触れるとともに、貧困解消のために教育投資が重要であると説明しました。

「子どもの貧困対策に取り組んでいくことが重要」だと繰り返し述べ、質疑のなかでは民主党への要請として、政府が本腰を入れない子どもの貧困調査について基礎自治体で入念な調査が行われるよう政府を後押ししてほしいと求めました。