国会質疑

2015年06月29日

2015年6月29日(月)【衆院安保特】「『デメリット一切ない』の強弁がこの法律への理解妨げている」長 妻代表代行

※民主党ホームページより転記

長妻昭代表代行は29日午前、衆院安全保障特別委員会の安保関連法案に関する質疑で、(1)自民党会合での一連の発言について(2)歴史認識、戦争の教訓(3)わが国に対する武力攻撃着手と存立危機事態の関係――について質問した。

長妻代表代行は、「自民党の会合で報道などに対する暴言があった。加藤官房副長官も出席していながら発言をいさめなかった責任は」との問いに、加藤副長官は、「百田氏の講演部分に出席していたが、その時にはマスコミや沖縄に関する発言は認識していない」と答え、責任の有無については答えなかった。

長妻代表代行は、「官房副長官という立場での出席ではないが、政府の要職にあり出席議員の中で当選期数が一番多い議員が、途中で退席したから全く関係ないというように聞こえる答弁は、果たしでそれでいいのか」と述べ、加藤副長官の答弁に不快感を呈した。

「ポイント・オブ・ノーリターンという言葉があるが、私は1931年の柳条湖事件、満州事変が一つのポイント・オブ・ノーリターンではあったのではないか」と述べたた長妻代表代行は、「この柳条湖事件などは、国策の誤りであったと同意していただけるか」と中谷防衛大臣に質問。中谷大臣は、「戦後の安保政策は、戦前の教訓、反省からできたもの。一番大きなものは文民統制で、関東軍の独走などの教訓から作られた」と答弁した。

長妻代表代行は、「防衛出動を下令するのは総理大臣だが、それを補佐するのは防衛大臣だ。70年前の戦争の教訓を正しく胸に刻んでいるか否かが、この法律によって間違った戦争をするか否かにかかっている」と指摘した上で、「わが国がなした昭和の一連の戦争は、国策を誤っていたという理解でいいか」との確認を求めた。中谷大臣は「過去に行ったどの行為が植民地支配や侵略に当たるか当たらないかを具体的に特定するのは困難。個々の歴史上の行為に評価を与えることは適当でないが、安倍内閣としては、村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる。今後も引き継いでいくべきと思っている」などと述べるにとどまった。その後も長妻代表代行が「これは根幹に関わる話だ。多くの国民が亡くなり、莫大な税金を掛けてあのような戦争が起きた。その反省に立って戦後われわれはスタートしている」など、再三質問を繰り返したが、肝心の、先の戦争は間違った戦争だったのかどうかについての答弁は最後まで無かった。

長妻代表代行は、「日本周辺で、日本を守っている米艦船に攻撃が行われ、『国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという、急迫・不正の事態』になった時に、個別的自衛権か集団的自衛権かの判断の分かれ道はどういう基準なのか」と質問した。それに対して中谷大臣は、「個別的自衛権は、わが国に対して武力行使が発生した場合。集団的自衛権はわが国に対する武力行使が発生していなくても排除できる権利だ」と話し、質問に対する答にはなっていなかった。

続けて長妻代表以代行は、「物理的には米艦船が攻撃されているが、これがわが国への武力攻撃の着手かそうではないのかの分かれ目は、どこで判断するのか」と、個別的自衛権と集団的自衛権の判断基準がどこにあるのかと重ねて質問。横畠法制局長官は、「どの時点で武力攻撃の着手があったと認定できるかは、その時の国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、対応等によるもので、抽象的にまたは限られた予見で論ずることはできない」「国際法上の縛りを踏まえての憲法上の縛りなどで判断する」などとは述べたが、明確な答弁になっていなかった。

長妻代表代行は、「米艦船が攻撃されたことで、わが国への武力攻撃の着手とも読めるが、何によって判断するのかを答えていない。わが国への武力攻撃の着手と同じ概念にもかかわらず、集団的自衛権という言葉が入った途端、ホルムズ海峡とか地球の裏側とか、非常に当てはめが拡大し、フルスペックの集団的自衛権に近いような運用がなされる可能性がある答弁が続いていることに問題がある」と懸念を表明した。

最後に、長妻代表代行は、「この法案のメリット、デメリットについて議論されていない」と述べた上で、「メリットについてはたくさん聞いたので、デメリットについて伺いたい」と質問した。中谷大臣は、「あらゆることに切れ目のない対応ができる」とする答弁に終始。長妻代表代行は、「全くデメリットがないのか。この法律は全てバラ色とわれわれは信じていいのか。一つだけ挙げるとしたら何か」と重ねて問いただしたが、中谷大臣は、「個別具体的事例はその時に判断する」と答えるに留まった。

長妻代表代行は、「歴史認識の話も含め、今日の答弁には驚いた。全てバラ色で何のデメリットもない。この法律ができても防衛費は上げない。中期防はそのまま。装備もそのまま。人員もそのまま。しかし自衛隊員の1人当たりの業務はどんどん増えている。日本周辺の守りが手薄にならないのかどうか」と指摘し、「デメリットは一切ないと強弁することがこの法律への理解を妨げている」と述べ質問を終えた。