日々の活動(旧)

2015年07月09日

2015年7月9日(木) 「ドイツにおける労働格差縮小の試み 日本への示唆」田中洋子筑波大学教授が講演

※民主党ホームページより転記

 民主党は9日夕、共生社会創造本部(本部長・岡田克也代表)の第19回総会を国会内で開き、筑波大学人文社会系教授の田中洋子氏からドイツでの労働格差縮小の試みと日本への示唆について講演を聞き、意見交換した。

 EUの経済的中心国として強い競争力を保っているドイツでは、格差是正のための労働規制の再構築が近年進んでいる。田中教授は、「規制の再構築」の特徴の第1として「労働時間の大胆な柔軟化」があると指摘。特徴の第2として「労働組合の長期低落傾向の反転がある」と述べ、若者を含む組合員の増加、賃金・労働時間等だけでなく教育・人員配置などの労働協約適用範囲の拡大、ストの活性化など労働規制の活性化があると述べ、特徴の第3として労働組合の規制力が及びにくいサービス業を中心に、最低賃金(8.5ユーロ=約1150円)の底上げがあると語った。

 田中教授はまた、EU諸国が不況の継続や若者を中心とした高失業率に苦しむ中で、ドイツは雇用を守ったままで深刻な経済不況を乗り切ったことについて着目したいと提起し、「これを実現できたのは協約団体(労働組合と経営者団体)による柔軟な労働時間の規制、コントロールがうまく機能したことでドイツ経済も危機から早期脱却に成功した」と説明。労働時間の柔軟化に関しては「人を解雇するのではなく労働時間を削減する」「従業者の削減ではなく労働時間の削減・柔軟化を通じて失業者を出さずに不況を乗り越え、従業員の生活を一定程度保障する」「国と労働組合総同盟と経営者団体との話し合いのなかで決め、企業レベルで実行する」――等が特徴で、この徹底によってドイツ経済の危機からの早期脱却へとつながったことを説明した。

 日本社会への示唆として田中教授は、(1)正社員としての身分・待遇保証を保った上で時間を思いきって柔軟化して働くパート(短時間)正社員という働き方を日本でも広く導入すべき(2)ドイツでは派遣労働者をはじめ若い現業労働者・非正規労働者を組織化して勢いを得ているので日本でも労働組合が非正規労働者の組織化を行うべき(3)介護・福祉の労働条件が悪く、働き手不足となっている実態を改善するため、思いきった政策的対応が必要――などと指摘した。