日々の活動(旧)

2015年02月11日

2015年2月11日(水) 北九州市で生活困窮者支援について意見交換

ながつま昭(「共生社会創造本部」の本部長代行)は、党非正規雇用対策本部座長を務める加藤敏幸参院議員などとともに、北九州市にある「抱樸(ほうぼく)館・北九州」を訪れ、「特定非営利活動法人・抱樸」の奥田知志理事長、森松長生常務理事とホームレスの自立支援の現状や今後の課題などについて意見を交わしました。
ながつま昭は「奥田理事長は、生活困窮者支援という事業の費用対効果を計算している。今日の関心の一つは、困窮者支援事業をすることで生活保護に陥る人が少なくなれば、社会が安定化する上に財政負担も減るという効果があるのではないか、ということだ。(困窮者支援のコストを)投資だと捉え、投資した額以上の効果が出ることを示し、最終的に社会全体のプラスになるのだという社会像を作って、財務省や新自由主義者を説得できるようにしたい」とあいさつしました。
はじめに、森松常務理事から同法人の沿革や事業概要などの説明を受けました。同法人は1988年に活動を開始し、(1)路上での支援(炊き出しや巡回パトロール)(2)路上生活から脱却し自立する支援(生活・就労支援、住宅の提供)(3)自立を継続させるための支援(見守り活動や互助会の運営など)――に取り組んでいる。この26年間の取り組みにより、当時市内に500人ほどいたホームレスは現在80人にまで減ったとのことでした。
法人名の「抱樸」とは、「素を見(あらわ)し樸を抱き」という『老子道徳経』にある言葉で、「樸」は原木の意。持ちにくく接しにくい原木を「抱き」大切にすることで、その原木が家具や楽器となって誰かの助けや支えになる――、という思いが込められている。森松常務理事は、同法人のコンセプトについて「世間では『ルールを守るなら引き受ける』という考え方が一般的だ。そのこと自体は大事だが、それだけでは、そのルールから外れてしまった人たちはどうすることもできない。だから私たちは『まず引き受ける』。支援や指導はそれからだ。関係を『断ち切る理由』ではなく、『つながる理由』を見出して支援していけるように職員一同が頑張っている」と説明しました。
つづいて、奥田理事長が困窮者の現状などを説明した上で、困窮者支援の費用対効果に関する試算を示しました。この試算では、ある自治体のホームレス自立支援センターの2013年の利用実績を用いて、センター利用者が仮にセンターを利用せずに生活保護受給者となった場合とを比較し、財政面での効果を検証しています。それによると、センターの事業費9234万円に対し、センター利用者が自立できずに生活保護受給者となった場合は1億1953万円の生活保護費がかかること、また、自立就労できれば1307万円の税や社会保険料の徴収ができることなどを示し、4026万円の財政効果があると結論付けています。奥田理事長は「これは単年度の試算だが、10年、20年という長期スパンでみるとその効果はさらに大きくなる。20代の人が80才まで生活保護なら現金給付は1億円以上になるが、仮に年間300万円の手厚い就労支援を2〜3年受けて自立就労する、ということを、80才までに4回繰り返したとしても3600万円だ」と述べ、積極的な困窮者支援の必要性を強調しました。
奥田理事長はまた、「かつてのように正規雇用が8割を超える状況を復活するのは、現実的には難しい。景気がいい状態を支えているは低賃金の非正規雇用であり、景気が良くなれば非正規雇用の問題が解消するわけではない。そうであれば、再分配を強化して社会に還元する仕組みを変えなければいけない。消費税の使途である『社会保障4経費』は、年金・医療・介護・子育てで、現役層の就労支援は入っていない。現役層に社会保障をどう使うのかを議論するべき時期に来ている」と述べました。
意見交換を終えた、ながつま昭は記者団に「共生社会本部は『格差を是正することで一人ひとりの能力が最大限発揮できるような土壌を作ることこそ日本再生の道だ』という思いで取り組んでいる。困窮者自立支援法は民主党政権時代のものが自民党政権に引き継がれて成立したが、その中身は後退してしまった。先々週の国会では困窮者世帯の学習支援の国費削減について追及したが、今後も非正規雇用の問題などを追及していきたい」と語りました。