2016年02月15日
2016年2月15日(月)【衆院予算委】「支え合う力育む社会を作り、持続可能な経済成長を実現」
衆院予算委員会では15日、「経済・地方創生等」に関する集中審議が行われ、長妻昭代表代行が特に格差問題を中心に質問に立ち、民主党と政府との考え方の違いを浮き彫りにした。
〇丸川大臣の発言
質疑の冒頭、長妻代表代行は丸川環境大臣に対し、福島第1原発事故後の除染の基準について「反原発派がワーワー騒いだ」などと発言したのかと事実関係をただした。丸川環境大臣は自身の発言であることを認めた上で発言を撤回したと答弁。長妻代表代行は発言自体が問題だとして「丸川大臣は『大臣の資格なし』と言わざるを得ない」と厳しく断じた。
〇民主党が目指す社会
長妻代行は、民主党が目指す社会は「一人ひとりがかけがえのない個人として尊重され、多様性を認めつつ互いに支え合い、すべての人に居場所と出番がある、強くてしなやかな社会」であるとし、こうした社会を実現するうえで「格差の壁」を取り除かなければならないと強調。「格差の壁」には、(1)教育格差の壁(2)雇用格差の壁(3)男女格差の壁――があると指摘した。
(1)教育格差の壁
教育格差の壁については、給付型奨学金を創設するべきと主張するとともに、たとえば一定の所得以下の人に限って国立大学の入学料と初年度授業料を無償(私立大学の場合には同額の助成)にした場合、その所要財源は556億円との試算を示し、「これなら財源をねん出できるのではないか。段階的に実現できるよう検討してほしい」と求めた。これに対し安倍総理は、財源を用意できないことを理由に消極的な姿勢を示したことから「軽減税率を入れながら『財源がない』というのは首を傾げる。この財源は未来への投資だ」と主張した。
また、1人親家庭に対する児童扶養手当の支給年齢が、18歳になった年の年度末とされていることで大学進学を断念させる一因となっていると指摘し、「20歳までの引き上げを検討してほしい」と要請したが、安倍総理は「高校卒業後進学する場合と就職する場合とのバランスを失することから困難」とした。
(2)雇用格差の壁、(3)男女格差の壁
雇用格差の壁については、最低賃金を平均1000円に引き上げることだけではなく、地域によって大きな差がある現行の最低賃金制度のあり方そのものが地域間の賃金格差に拍車をかけていると指摘し、「(全国的に)もう少し統一的な最低賃金にすべき」と主張した。
さらに男女格差の壁に関連して、長時間労働が女性にとって負担であるだけではなく、夫の家事・育児参加も阻んでいるとし、「日本でも残業時間・総労働時間の上限の法的規制を設けるべき」と主張。また、現行では労使間の協定(いわゆる36協定)によって無制限に残業が可能となることから、こうした協定が結べないようにすることや、終業から次の出勤まで一定時間以上空けるインターバル規制の導入などを提案した。安倍総理は「長時間労働の抑制は重要」と述べたものの、法規制については慎重な姿勢を示したことから、長妻代表代行は「現在国会に提出されている労働基準法改正案は『残業代ゼロ法案』と言われている。言っていることとやっていることが逆行しないよう、この法律を撤回してほしい」と求めた。
公正な分配による持続可能な経済成長を
日本では個人の年間所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる(右図参照)。その理由として、株の譲渡益や配当、金利収入などの金融所得に対する課税が分離課税になっている上に税率が20%(株式譲渡益には2013年まで10%の軽減税率を適用)と非常に低いことがある。長妻代表代行はこの税率を25%程度に上げ、これを格差是正の対策費の財源に充てることを提案した。
その上で「われわれは格差の壁を取り除いた後、誰も置き去りしない社会を作り上げる。支えられる側が、無理なく支える側に回ることのできる社会、支え合う力を育んでいく社会を作り上げていくことで、結果として持続可能な経済成長を実現していく」と語り、安倍総理に対しても経済成長ありきの政策からの転換を求めた。